【食コラム】 「森は海の恋人」キューピッドは「鉄」だった。
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2009年09月24日

「面白いものを見せられると思うので、連休明けにでもゆっくり来られたらどうですか」畠山さんからのお誘いで久しぶりに三陸・気仙沼を訪ねた。
合言葉「森は海の恋人」という植樹運動で知られる畠山重篤さん。本業は漁師、カキ養殖業であるが全国区どころか海外での評価も高い。近年は京都大学で教鞭もとられる環境問題の旗手である。
「面白いやつがいるから紹介するよ」と畠山さんとの出会いをつくってくれたのは陸前高田、八木澤商店の河野和義社長。
もう20年以上も前のことである。

最初に訪ねた時も2回目も畠山さんは海ではなく山にいた。既に植樹運動の準備を始めていて、基地となる室根山である。
長年あたためていたというキャッチフレーズ「森は海の恋人」について熱く語る。ついつい引き込まれて、養殖場で日没を迎えてしまうこともしばしばだった。以来、折りあるごとに訪ねた。食の学校のフォーラムやセミナー、産地研修なども何度か機会をつくっていただいたが、いずれも駆け足。
畠山さんの舟に乗せてもらい、ゆっくりカキ筏を巡るのは何年ぶりのことだろう。
「さあ舟に乗る前に見せたいものの登場ですよ」と浮き桟橋のぶ厚い板を一枚はずした畠山さん。促されて覗き込んだ水面下が黒々としている。え?この入江はいつも澄んでいて岩に張り付いた貝やゆらぐ海藻の細部までよく見えたのに。目を凝らして見るとその黒いものが動いている。
魚の群れだ。海底から湧いてきたかの如くの大群。メバルの二年魚だそうだ。さらにもう一枚板を外して、水中の金カゴを引き上げる。中には赤茶色の物体(?)。畠山さん曰く「鉄炭ダンゴ」これが魚群生の源らしい。竹炭と鉄くずを粘土で固めて焼いたもので、3年前から浮き桟橋下に吊り下げた。
半年たった頃から海藻の繁茂が顕著になり、魚の群れが現れるようになったという。見るからに重そうな鉄の塊である。が、以外に軽い。
吊り下げられた海中にあって、少しずつ少しずつ鉄が溶け出し、藻を育て魚を育んできたのだ。

豊かな森が豊かな海を育てる。
植物プランクトンや海藻を増やすには海が豊かであることが必須。だがどんな海でも鉄分が足りないと植物プランクトンも海藻も育たず、貝や魚は寄り付かない。陸の植物もチッソやリンが豊富にあっても鉄がないと栄養分を吸収できない。その植物プランクトンを吸収できるかたちで鉄分を供給しているのが森林。というのが「森は海の恋人運動」の根幹なのである。「炭鉄ダンゴ」は畠山さんが植樹運動を展開するなかで、気づき、調査し、実践したことの確たる証でもある。
「森と海」双方を結びつけるキューピッドは「鉄」だったのだ。
宮崎駿アニメ「もののけ姫」に登場するたたら製鉄は島根県奥出雲が舞台。古代からの鉄の産地は高度な製鉄の技術のみならず、そこを流れる斐伊川から宍道湖、日本海に豊かな恵みをもたらしてきた。鉄分の供給である。実は南三陸でも昔から「たたら製鉄は盛んに行われていて、出雲に次ぐ鉄の産地だったという。
奥出雲と三陸。個人的にも最も縁が深く、長いお付き合いを続けてきた。何よりすばらしい方々がいる地域である。
今さらながら「鉄のご縁」に感謝!
「おまけのおいしい情報」
Rのつく月はカキは食べられない!? カキがおいしくなるのは実はこのあとから。植物プランクトンをたっぷり含んだ山の雪解け水がカキを太らせる。水山養殖場でデビューした「青葉ガキ」は通常のカキシーズンが終わる頃から出荷する。小ぶりで底がとんがってるシドニーロックタイプ。
つるんと呑み込むと海の香りが広がった。
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